超音波の効果

超音波とは

超音波とは、人間の耳に聞こえない20kHz以上の音波です。
超音波は電磁波とは異なり、進行方向に対する粗密波のため媒体がないと伝達しません。
したがって、真空中では全く伝わらず気体<液体<固体の順に伝達し易くなります。


医・歯科での応用

通常治療に使用される超音波は生体作用を得る必要があるため、周波数0.7 MHz ~3 MHz、音響強度0.1~3 W/cm2の平面波状超音波が用いられます。また超音波は電磁波と比べて皮下深くにエネルギーの収束を行うことができるという特徴を持つとされ、これらの特徴を応用してさまざまな治療がなされています。

AU300D超音波歯ブラシでは骨の再生や止血に有効とされている1.6MHzを使っています。

人間の体に浸透しやすく安全な1.6MHzの超音波周波数を用いています。
米国クリーブランドクリニックで行われた臨床試験結果では、1回3分の歯磨きを1日2回行った場合、30日後には一度の歯磨きで「97%もの歯垢を除去できる」効果が確認されています。
また、1.6MHzの超音波は『日本歯科保存学会誌』の論文においても虫歯菌や歯垢の除去への有効性が証明されています。
『日本歯周病学会会誌』の論文でも硬くフイルム状に付着したバイオフイルムの除去効果があると証明されています。

駆動方式 音波ブラシ(米国製) 超音波歯ブラシ
振動周波数 31000回/分 16000回/分(音波振動)
超音波 1.6MHz
磨き方 歯面にあてて少しづつずらす 通常の歯ブラシ同様に小さく動かしてみがく
磨きやすさ 前歯の裏側や凸凹な歯並びには当てにくい 振動の幅が小さく、磨き心地が非常に柔かい。
ハミガキ剤の選択 研磨剤無配合、低発泡性 限定はしませんが、低発泡性がお勧め。
効果 プラークを物理的・機械的に除去 1.6MHzの低強度超音波により
1)歯表面のプラークの付着力を弱めるため、プラークが落ちやすく、付きにくくなる。
2)細菌の繊毛を破壊し、細菌の構造にダメージを与える。
3)骨や皮膚の創傷治癒を促進するので、歯周病の治りを促進し、予防的に働く。微弱超音波のため、細胞が増殖するのでインプラント治療にも有効とのデータがあります。
4)再発性アフタ性
口内炎の治りが早くなる(口内炎予防)とのデータがあります。



超音波歯ブラシのプラーク、歯肉出血、歯肉炎に対する効果:30日後の各指標の減少率

右の図1~3は米国クリーブランドクリニックで行われた超音波歯ブラシの効果実験データーです。

図1、被験者27人について行われました。
実験開始時にプラーク指数、歯肉出血、歯肉炎指数を計り、30日間超音波歯ブラシを使用した後計測した表です。

注1、実験でのプラークの計り方はブラッシングする前のプラーク量を100としてブラッシング後にプラークを計り指数としています。
図1
図1、超音波歯ブラシのプラーク、歯肉出血、歯肉炎に対する効果:30日後の各指標の減少率
*Terezhalmy GT et al. Compend Contin Educ Dent.
1994;XV,866-874

超音波ブラシをさらに使い続けた場合の効果

図2、図1のグループにさらに5ヶ月間超音波歯ブラシを使用してプラーク指数を計測した表です。
注2、注1で述べたようにブラッシング始める前のプラーク量を100としています30日間超音波歯ブラシを使用した後のプラーク量はブラッシング前でも減少している為、パーセンテージは低くなっています。
注3、手用ハブラシのグループはブラッシング指導しています。
●この表から判ることは、超音波歯ブラシを使い続けることによりプラークが付きにくく落ちやすくなっていることが判ります。
図3
図2、30日後におけるプラーク指数の減少
*Terezhalmy GT et al. Compend Contin Educ Dent.
1995;73:97-103

30日後におけるプラーク指数の減少

図3、手用ハブラシのグループと超音波ハブラシのグループが30日間それぞれを使用した後計測した表です。

●この表から判ることは、手用ハブラシを30日使用したグループと超音波歯ブラシを30日間使用したグループでは超音波歯ブラシのグループに優位性があることがわかります。
図2
図3、超音波歯ブラシのプラーク、歯肉炎に対する効果:6カ月積の各指標の減少率
*Terezhalmy GT et al. J Pprosthet Dent.
1995;73:97-103

手用歯ブラシから超音波歯ブラシに変更した場合のRASの減少率

図4、はコロラド大学で行われた超音波歯ブラシと手用ハブラシの再発性アフタ性口内炎に対する効果実験です。
実験にはコロラド大学病院とデンバー地域の患者50名が集められました。
最終的に実験終了したのは35名でその実験結果です。

RAS*:病変(再発性アフタ性口内炎)の持続日数の和を観察日数で除いた値

●この表から判ることは、手用ハブラシを30日間使用したグループより超音波歯ブラシを使用したグループの方が再発を繰り返す口内炎が出来にくくなっていることが判ります。
図4
図4、手用歯ブラシから超音波歯ブラシに変更した場合のRASの減少率
*Brice SL.. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral
Radion Endod 1997;83:14-20

超音波ブラシの歯周ポケット縮小効果

右の図5,6は、コロラド大学で行われた超音波歯ブラシの歯周ポケットへの効果実験です。
*未発表データ

図5は1日2回8週間超音波歯ブラシを使用した後、使用前、使用後の歯周ポケットの計測結果です。
図5
図5、歯周ポケットの深さの短縮率

歯肉縁下細菌叢に対する超音波ブラシの効果

図6は歯肉縁下(歯周ポケット内)の細菌の集まりを超音波歯ブラシの使用前使用後で比較した物です。
図6
図6、歯肉縁下細菌叢に対する超音波歯ブラシの作用

北里環境科学センターでの試験

超音波照射したほうが、バイオフイルムの形成が無く着色していないので、超音波を歯や歯茎に直接伝えるマッサージヘッドの有効性が説明できます。
写真2
写真2 超音波素子照射実験後にクリスタルバイオレットで染色
試験条件及びクリスタルバイオレットの染色状況
表1 

試験条件 染色状況 バイオフィルムの
形成
照射有り 超音波発振素子から5mm離し、24時間照射 着色無し 無し
対照 超音波照射無し 前面に紫着色 有り
※電源部:9V

論文 1.6MHz超音波ブラシによる骨再生推進への効果

粒粒の連鎖状になっている不溶性グルガンに超音波を照射すると、連鎖が切れている様子が分かります
軽度歯周炎患者に対して超音波歯ブラシを短期間使用させ、各種臨床パラメータおよび細菌学的評価の変化を調査し、腔清掃器具として使用できる可能性を確認。
そこで、プラーク形成において歯面上に初期に付着する細菌Streptococcus oralisに対する除去効果について実験を行い細菌の連鎖が短くなり、通常の歯ブラシを使用する場合よりもプラーク形成を抑制できることを確認した。

日本大学歯学部保存学教室歯周病学講座
岩崎宏泰、森杏子、鶴田浩一、伊藤公一
超音波照射前
超音波照射後
(画像は連鎖がわかりやすいように着色してあります。)